選択肢 x と無差別であるような選択肢の集合を無差別集合 (indifference set) といい,I(x) で表します.次の図を見てください

これは,ある消費者のココナッツとパパイヤに関する無差別な選好を表しています.点 x は,ココナッツを1個とパパイヤを4個という選択を表し,(1, 4) と表現します.同様に,点 y は,(2, 2),点 z は (4, 1),点 w は (2, 4) と表現します.
無差別集合の定義より,x と y は無差別であり,y と z も無差別であり,x と z も無差別であることになります.すなわち,この消費者にとって,ココナッツを1個とパパイヤを4個食べることと,ココナッツを2個とパパイヤを2個食べることと,ココナッツを4個食べることとパパイヤを1個食べることは同等に好んでいることになります.記号で表現すると,x I y, y I z, x I z が成立しています.
選択肢 x, y, z に対して,w は無差別集合 I(x) 上にはありませんので,選好関係の完全性の仮定より,x と w を比較するとどちらが望ましいかを判別できなければなりません.この判別に対して次のような仮定を設定します.
x > y かつ x ≠ y ならば x R y が成立する.ここで,x > y や x ≠ y は,ベクトルの演算子を表します.選好関係が単調性を満足するならば,w を x よりも選好します,記号で表現すると,w R x が成立します.なぜならば,x における消費量 (1, 4) よりも w における消費量 (2, 4) の方が,パパイヤが1個多いからです.
この単調性の仮定より,次のような無差別集合の形状を排除しています.


図1では,x よりも y の方がココナッツの消費量が多いにもかかわらず,x と y が無差別の関係にあり,単調性の仮定に矛盾します.
図2では,選択肢 y へ行くほどより望ましい状況を表しています.選択肢 x よりも 選択肢 y の方がココナッツとパパイヤの消費量が少ないのも関わらず,図より y を x よりも選好していることになり,単調性の仮定に矛盾します.
ところで,点 y のような選択肢を飽和点 といいます.なぜならば,選択肢 y よりも望ましい選択肢が他にないからです.単調性の仮定はこのように飽和点の存在も排除(これを非飽和性 (nonsatiation) という)しています.
単調性を仮定することで無差別集合は,厚みをもたない曲線で描くことができるので,このような無差別集合無差別曲線 (indifference curve) といいます.また,単調性を仮定すると,図3の矢印の方向にある選択肢ほど望ましい選択となります.一般に,選択肢 x よりも上方にある選択肢の集まりを x の上方位集合 (upper contour set) といい,選択肢 x よりも下方にある選択肢の集まりを x の下方位集合 (lower contour set) といいます.


選好関係が合理的であるならば,無差別曲線が交わることはありません.図4では,x P y となる2本の無差別曲線を描いています.図では,x I z, y I z が成立していますが,推移性の仮定より,x I y が成立しなければなりません.これは x P y に矛盾しています.
ミクロ経済学では分析が簡単になるように,選好関係に関してもう一つ仮定を設定します.
y R x, z R x ならば,(αy + (1 - α)z) R x が成立する.(0 ≦ α ≦ 1)凸性は,図5のような無差別曲線の形状を排除しています.図5は,y P x, z P x が成立しているにもかかわらず,x R (α y + (1 - α)z) が成立しているからです.


ココナッツの量を x1, パパイヤの量を x2 とすると,選択肢は, x = (x1, x2) で表されます.このとき,ココナッツを第1財,パパイヤを第2財といい,選択肢 x を消費バンドル (consumption bundle) といいます.一般に,消費財が M 個ある場合,消費バンドルは M 次元ベクトルで表され,消費バンドル x の第 m 番目の消費財を第 m 財と呼びます.